オーディオ顛末記(1)──2001年より前の話

もともと我が家にあったオーディオ機器は配偶者が独身時代にバラバラに揃えたものだった。
この“バラバラ”は、こだわって選んだとかお金を貯めて少しずつ揃えたという意味ではない。白物家電を買うように適当に買い足しただけのことだ。
もちろんそれらは家電量販店で扱うクラスの機種で、特にスピーカはサイズといいミニコンポよりはマシという程度。そんな中なぜかアンプはオーディオマニア の同僚から購入したSansuiのAU-D907F Extraなのが、今考えると何とも不釣り合いだった。
もっともそんな構成でもミニコンポ程度の音は出るわけで、「いずれもう少しマトモな機器が欲しいね」と言いつつも具体的に検討するでもなく過ごしていた。

もっと前を振り返ると、私には「学生時代ジャズ喫茶に入り浸った」とか「親戚の家でハイエンドオーディオの音を聴いた」といった経験がない。物心ついた頃 から家には某総合電機メーカ製のステレオがあって、父親は私に子供でも取っつきやすいあたりのクラシックなどを聴かせてくれたが、それは少し余裕 のある家が百科事典を買うのに近いものだった気がする。
父親の影響か他に原因があってか音楽好きな人間に育ち、中学時代は音大への進学を考えるほどだったのに、「良い音で聴きたい」という欲求が希薄だったのは 「良い再生音」を聴く機会がなかったせいかも知れない。(もう一つ思い当たる理由があるけどとりあえず秘密)
当然ながらオーディオ専門誌を眺めて高級機に憧れるといったこともなく、オーディオに関してはまったく無知だった。いや 今でも大して知っちゃいませんが。

そんな私に転機が訪れたのは2001年3月。1枚のCDがすべての始まりだった……。

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