オーディオ顛末記（２４）──Live! Live!

10月末、北九州・風土で板橋文夫(pf)太田惠資(vln)デュオを聴く。
板橋さんの端正さと破滅が同居する演奏は無論のこと、太田さんの素晴らしいこと！　まさに一音一音が言葉！　 一体どうすればこんなに説得力のある演奏ができるんだろう？　その、メロディラインの単なる一部分ではなくそれぞれが確たる意味を持つ音と、決して美声で はない声で歌われる唄が、懐かしいような見慣れないような不思議な風景へ聴くものを連れて行く。ホーミー（本人曰く「なんちゃってホーミー」だそうだ が）を交えた「Kita no Umi」では巨きな蜃（ハマグリ）が吐く幻を見ていた……

下関で長年ジャズのイベントを手掛けてきた人物がこの年の夏に亡くなった。佐藤允彦氏のエッセイにもＭ氏として登場する人物だが、生前多少面識があったこともあり、11月半ばに開かれた「偲ぶ会」に出かける。
頭だったところでは佐藤允彦(pf)日野皓正(tp)前田祐希(vo)藤山“ET”英一郎(ds)といった面々が参加、地元の若いミュージシャンを交えた セッションや日野さんの即興演奏などで賑やかに送り出す会となった。最後は佐藤さんのピアノで出席者全員「ふるさと」を合唱。佐藤さんの伴奏で歌う機会な んてあまりないよなあ^^;。

さてドンピシャぶつかったのは、11/22〜29の大口純一郎トリオ九州ツアーと11/23の辛島文雄・ケイ赤城デュオ＠鎌倉。直前まで悩んで、結局こういうスケジュールに。

11/22(金)大口純一郎トリオ＠北九州
11/23(土)辛島文雄・ケイ赤城デュオ＠鎌倉芸術館
11/24(日)モーションブルーヨコハマ
11/29(金)大口純一郎トリオ＠博多NEW COMBO

先に神奈川県の話を。
辛島文雄・ケイ赤城デュオはまったく個性の異なるピアニスト２人、当事者達も「一体どんな演奏になるんだろうねえ」と言ってたくらいでまったく予測不能。
それが、このクラスの人になると大声で個性を主張する必要がないというところか。気の置けない旧友同士の会話に自ずと各々の持ち味が滲むのを見るようで、聴いていてとてもリラックスできた。
＃この時の演奏はCD『Grand New Touch』としてリリースされてます。
開演に少し遅れたため1st SETは後ろの席で聴いたのだけど、ふと横を見ると辛島さんのご子息（九州在住）が。向こうも気付いて…いやあの、freezeせんといてくらはい^^;。
他にも関係者の方々がオバケ見たような顔をする中、ケイさんは「よく来てくれましたー」と笑顔だったのはさすが。と思ってたら後日聞いたところでは「なんかすっごく似た人がいるなあ、でもここは鎌倉で九州じゃないもんなあと思ってよく見たら本物だった」そーで。

モーションブルーヨコハマは、Niftyマイホームフォーラムの横浜周辺在住のメンバーが開いてくれたオフ会。メンバーの１人がモーションブルーの近くに オフィスを構えていてオープン間もない同店の招待券があったので、どんなとこだか見物がてら(笑)の企画だった。なので聴いたのは、たまたま出演していた外国人女性歌手。 「オーガニックソウル」とコピーがあったが、行った全員「オーガニックソウルって…なにがオーガニック？」状態。
実はオフ会がなければアケタの店で古澤良治郎グループを聴くつもりだったのだけど。ハコも出演者も力一杯違うぞ(笑)
モーションブルーは立地といい内装といい、絵に描いたような“オシャレなデートコース”？　小さなライヴハウスに慣れた身には何だか落ち着かない。
それはともかくこの店も音が硬く、一つ手を打ってみるとビィィンと嫌な感じの反響が。一同天井を見上げ「天井スレートじゃん、音のこと何も考えてないな あ」。また案内された席が窓際で、着いてしばらくするとゾクッと寒気。「やだ信じられない、シングルサッシのシングルガラスじゃん。輻射で寒いはずだよ」。顔ぶれが建築士や空調機屋なのでこんな話になるのは是非もない(笑)。
演奏のほうは、私にとっては正直“上質のエンターテインメント”止まり。すると演奏を聴きながら料理やお酒を味わう余裕がある。なるほどブルーノートが盛 んに言う「音楽と一緒に料理やお酒も楽しんで」というのはこういう感じなのか。でも、例えば今のケイ赤城トリオやかつて聴いた佐藤允彦トリオなんかだと料 理を味わうどころか物を食べる余裕などないし、逆にこの日のように余裕を持てる程度の演奏ならわざわざ聴きたいと思わないのだけど。
他のブルーノート各店の客の入り具合は知らないが、ブルーノート福岡の人気の無さはこの辺りの客と店の意識のズレが理由の一つではないだろうか。

＃モーションブルーヨコハマはその後ステージが撤去され、「だいぶマシな音になった」（某ミュージシャン談）そうだ。